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2025年度韓国スタディツアー報告
NPO法人ひとり親家庭サポート団体全国協議会では、2025年12月3日〜6日にかけて、韓国・ソウルでひとり親家庭支援の現場や制度を学び、現地のひとり親支援団体と交流することを目的としたスタディツアーを実施しました。
現地の支援機関、支援団体との交流を通じて日本とは異なる支援制度や民間の支援に直接触れ、多くの学びと気づきを得ることができました。
以下に、4日間の主な活動と写真を交えてご報告します。
■1日目(12月3日・水)到着〜オリエンテーション
今回のスタディツアーには、加盟40団体のうち15団体から15人が参加。
夕方にソウル市内のホテルに到着後、場所を移動してオリエンテーションを実施しました。
ソウル市ひとり親家族支援センターのイ・ヨンホセンター長から、ツアーのスケジュールや訪問先の概要を説明いただき、当団体の赤石理事長から学びのテーマの共有をした上で意見交換を行いました。

<ミーティングスペースでのオリエンテーション>
■2日目(12月4日・木)施設見学と日韓セミナー
▶ソウル家庭法院と面接交渉センター

<面接交渉センターの入口>
午前中にはソウル家庭法院を見学しました。離婚後の面会交流(面接交渉)を支援している面接交渉センターや家庭法院の調停する部屋や親支援プログラムを実施する場所を見学しました。ソウル家庭法院の主席調査官が流暢な日本語で説明してくださいました。
韓国では、養育費と面接交渉を取り決めることになっており、2014年に面接交渉センターが全国で3か所できましたが、現在では全国17か所に増加しています。幼い子と大きい子の面接交渉の部屋と観察室がありました。また外遊びをしながら面会できるところもありました。月2回6か月間が基本だということでした。
訪問したメンバーからはDVの対応などの質問が出ました。
(韓国では、養育費確保の取組も日本より進んでおり、養育費履行管理院が2015年に発足、その後不払いの親に対する罰則制度などができていたのですが、2025年7月立替払い制度ができました)

▶日韓セミナー(13:30~)
午後からはソウル女性プラザに移動し、国際フォーラム「境界知能および支援が必要なひとり親の子育て支援の現状」に参加しました。
会場は、韓国のひとり親家庭支援団体の方たちで満員です。
当日のフォーラムを主催者が動画記録をまとめてくださいました。
動画 国際フォーラム「境界知能および支援が必要なひとり親の子育て支援の現状」
https://www.youtube.com/watch?v=CBioSWVDMIE

はじめに、ソウル市ひとり親家族支援センターのイ・ヨンホセンター長と当団体の赤石千衣子理事長があいさつを行いました。

フォーラムでは「境界知能および支援が必要なひとり親の子育て支援の現状」について、韓国・日本・オーストラリアの取り組みの報告と意見交換を行ないました。
一人目の発表は、ソウル市ひとり親家族支援センターのパク・ハナ チーム長による「韓国の境界知能ひとり親家庭への支援」です。境界知能(IQ71-84)を持つひとり親は、知的障害には該当しないものの、日常生活に様々な困難を抱えています 。こうした課題に対応するため、「通常のひとり親支援とは異なる」個別型支援、診断・評価基盤サービス、多機関連携、そして長期持続支援構造の必要性が強調されました。
二人目の発表は、当団体の赤石千衣子理事長による「 日本の支援を必要とするひとり親の現状と課題」です。就労率が高い反面、非正規就労が多く経済的に厳しい状況にある日本のひとり親の現状が挙げられた後、現在の物価高騰によるさらなる生活苦、来年施行される民法改正後の共同親権、養育費、また子どもの不登校や親子の健康問題などが説明されました 。
三人目の発表は、研究者 イ・オクヒョンさんによる「オーストラリアの支援を必要とするひとり親支援政策」です。オーストラリアでは、3層モデル(財政支援、児童教育及び保育機関支援、直接支援サービス)の支援体制をとっているオーストラリアの現状が説明されました。
四人目は、臨床心理専門家 パク・ミンア氏による「 事例から見る多層的な困難」です。境界知能を持つひとり親への支援介入については、ひとり親家庭の特性と境界知能の特性の両方を考えることや長期的支援の必要性を訴えました。


最後にまとめが行われ、座長のチャン・ミョンソン氏より、日韓・オーストラリアの話を通じた共通点として、貧困や養育費の問題、また親子の健康などが課題として挙げられ、今後も国を超えた議論継続の重要性を確認しました 。日本からも境界知能、グレーゾーンのシングルマザーの支援に苦慮している事例も語られました。韓国では、境界知能のひとり親に対する支援の制度化をめざす、ということで、支援制度をつくっていくその現場に立ち会うことができました。
▶日韓懇談会


<日韓懇談会>
その後、韓国のさまざまなひとり親支援団体のリーダーたちと懇親会を行いました。それぞれの自己紹介の後、多くの質疑応答が行われました。ソウルひとり親会の代表、1366女性に対する暴力ホットライン団体のメンバー、未婚の母の当事者団体、グローバルひとり親会のメンバー、父子家庭の団体メンバーなど10以上の団体と意見交換が行われました。
▶ 夕食交流会(17:10〜20:00)

<夕食は参鶏湯>
その後、皆で夕食は参鶏湯の名店へ。おいしい参鶏湯を食べながら交流を深めました。
■ 3日目(12月5日・金)ひとり親支援の現場を訪問
▶ ソウル市ひとり親家族支援センター(8:00〜12:00)


<ソウル市ひとり親家族支援センターを訪問 入るとWELCOMの大きな文字がひとり親を迎えます>
ソウル市ひとり親家族支援センターの事務局長の説明のあと、イ・ヨンホセンター長からも説明を受けました。ソウル市ひとり親家族支援センターは特別条例で運営されているそうです。未婚の母支援、働く母親支援、家事支援、相談支援、ひとり親こども成長支援事業、自助グループ支援、住宅資金貸し出し事業、境界知能ひとり親家庭支援事業、中高年シングルマザー支援など様々な支援を行っています。また5月10日のひとり親の日に、お祭りも開催しているということでした。

<ソウル市ひとり親家族支援センター・センター長による制度説明>
▶ 石佛寺(ソップルサ)での中高年ひとり親支援プログラムの体験(午後)



<石佛寺>
「中高年のひとり親向け支援プログラムであるテンプルステイを体験」
ソウル市ひとり親家族支援センターでは、中高年のひとり親当事者向けに提供している「テンプルステイ」を実際に体験。早朝の瞑想や漢江での散歩、住職との茶話会を通して、これまでとこれからの自分を見つめなおす時間を持ちました。
韓国でもこどもが18歳になったあと、ひとり親家庭支援が受けられなくなり、自立できないこどもとの関係が悪化したり、苦しい思いをしているひとり親が多いとのことです。中高年シングルマザーをお寺に招待し、自分の人生をふりかえり、プログラムを通じて、自分の自己肯定感を高め、よくやってきた自分を認めるプログラムです。
お食事はヘルシーでとてもおいしく、たくさんのメニューを自分で選んでいただきました。おかわりメンバーが続出しました。

メンバーも早朝4時からの瞑想や散歩瞑想でそれぞれの振り返りをしました。
■ 4日目(12月6日・土)ふり返り

<ふり返りミーティング>
「帰国前にスタディツアーの学びをシェアし合いました」
それぞれが得た気づきや、今後の活動にどう活かすかを共有し、ツアーを締めくくりました。
■ 最後に
韓国のひとり親家庭支援は日本よりも歴史は浅いですが、この20年で劇的な変化を遂げています。そこには、さまざまな活動があったから実現したものがあります。スタディツアーの参加者はその変化を起こした過程を学ぶことができ貴重な機会となりました。
参加者が持ち帰った知見を、今後の支援者養成講座・団体事業・自治体や企業との協働に活かしてまいります。
イ・ヨンホ ソウル市ひとり親家族支援センター長はじめ、行程にすべて同行し、長時間にわたり丁寧に通訳してくださった通訳のみなさま、訪問先のすべての方々、力を貸してくださったみなさまに感謝いたします。
なお、今回のスタディツアーの報告会を2026年1月20日夜にオンラインで予定しています。