ひとり親家庭の子どもたちの現状

教育費に関するひとり親家庭のこどもたちの声

ひとり親家庭サポート団体全国協議会では、すべてのこどもたちが経済的な理由で進学を諦めることのない社会を目指し、政策提言や情報提供に取り組んでいます。

今回、教育費をめぐる体験や思いを募集したところ、短期間の呼びかけにもかかわらず、全国から339通もの切実な声が寄せられました。

そこには、進学への不安、制度の壁、そして「未来への希望」を語ることすら遠慮してしまう」ような現実が詰まっていました。
 進路を選ぶ自由がないこと、支援制度の複雑さ、相談のハードル、情報格差――届いた声のひとつひとつが、制度の隙間に取り残されている子どもたちの姿を映し出しています。

このページでは、こどもたちの生の声をもとに、ひとり親家庭の教育費をめぐる課題と制度のあり方を考えます。
 いただいた回答の一部を、個人が特定されないよう十分に配慮し、ご本人の確認を経て掲載しています。

こどもたちの声

1. 進学費用・受験費用による進路制限

進学にかかる学費や受験料、交通費などの負担は、進路選択の幅を狭めます。希望する学校や学部を諦めざるを得なかったり、受験校をぎりぎりまで絞らざるを得ない状況は、子どもたちの将来の可能性を制限し、自己決定権を奪う要因となっています。

私は塾に通ったことがありません。家計の事情で通塾費用が出せず、受験期間はずっと不安と焦りの中で過ごしました。周囲の友達が塾で対策をしているのを見て、自分だけが取り残されているような気持ちになりました。私立高校は学費的に絶対に無理だと分かっていたので、公立に受からなければならないという強いプレッシャーが常にあり、進路選択の自由はありませんでした。
四国地方/大学生/女性
高校受験の際、英検や漢検を受けると有利になると先生に言われました。でも、受験料が高くて、家ではとても出せないと分かっていたので、泣く泣く諦めました。友達から『なんで受けないの?』と聞かれても、家庭の事情を打ち明けることができず、ただ笑ってごまかすしかありませんでした。あのときの悔しさと悲しさは、今でも忘れられません。
四国地方/大学生/女性
高校進学を考えたとき、私立高校の入学金や授業料について母に相談しました。すると母は『お金がない』と一言。その瞬間、私立は選択肢から消えました。進学先を選ぶ自由がないことが、こんなにも苦しいとは思いませんでした。
四国地方/大学生/女性
離婚をする前から、父親の借金などで家計はずっと苦しく、習い事や塾には一度も通えませんでした。進学に向けて不安を感じながらも、家庭の事情を周囲に打ち明けることはできず、ずっと我慢してきました。それでも、奨学金制度があると聞いて希望を持ちましたが、申請条件に“世帯主の収入”だけが基準として使われていることを知り、深く落ち込みました。家庭内にどんな問題があっても、年収だけで“支障がない家庭”と判断されてしまうことが、本当に苦しかったです。制度の枠に入れなかったことで、自分の努力や状況が認められないような気がして、進学への意欲すら揺らいだ時期もありました。その当時に、もっと柔軟に、家庭の実情に寄り添った支援があったら、どれだけ救われたかと思います。
四国地方/大学生/女性

2. 通塾を含む習い事や部活動の制限

塾や予備校に通う費用、模試代や参考書など学習にかかる教材費の負担は大きく、機会の格差を生んでいます。周りの多くが塾に通う中、自力で勉強するしかない状況は、学力面だけでなく不安や孤立感を生み、学ぶ意欲や進学への自信を失わせる要因にもなっています。また習い事や部活動にかかる月謝、道具代、遠征費などが高額で、子どもがやりたいことを諦めざるえない場面が多くあります。文化・スポーツ活動を通じた成長機会が失われるだけでなく、親の負担を気遣い、希望を口にできないという心理的抑圧も生じています。

高校でダンス部に入部したとき、学校の部活動だから費用はほとんどかからないと思っていました。けれど、実際には衣装代、遠征費、指導料などが次々に必要になり、高額な請求に驚きました。母はその費用を工面するために、深夜の倉庫でアルバイトを始めました。疲れて帰ってくる母の姿を見るたびに、申し訳ない気持ちでいっぱいになり、自分の好きなことを続けていいのか悩みました。部活動は楽しいはずなのに、家計のことを気にしながら続けるのは、心のどこかでずっと負担でした。
中部地方/大学生/女性
サッカー部に入りたかったのですが、ユニフォーム代が払えないことが分かり、母が落ち込んでいる姿を見て、自分も諦めるしかないと思いました。 部活動は学校生活の中でも楽しみにしていたことだったので、参加できないことがとても残念でした。母に負担をかけたくないという気持ちが強く、何かを始める前に“お金のこと”を考えてしまうようになりました。
中部地方/大学生/女性
高校時代、周囲のほとんどの友達が塾に通っていました。私は家計のことを考えて、自分だけの力で勉強するしかありませんでした。限界を感じながらも、母に負担をかけたくなくて、塾に通いたいとは言えませんでした。 母は『行ってもいいよ』と言ってくれましたが、その言葉の裏にある苦労を知っていたので、どうしても踏み出せませんでした。進学のために努力したい気持ちはあっても、家計への遠慮が常に頭をよぎり、自分の希望を抑えることが習慣になっていました。
中部地方/大学生/女性

3. 学校生活・イベント参加の制限

制服、修学旅行、宿泊学習、卒業アルバムなど学校生活に必要な費用が負担となり、参加を辞退したり、準備が不十分なまま臨むケースがあります。周囲との違いに気づき、恥ずかしさや疎外感を感じることで、学校生活そのものへの意欲や安心感が損なわれています。

中学生のとき、バスケ部に入部しました。部活が楽しくて、もっと頑張りたいと思っていたのですが、ユニフォームの購入費や土日の練習試合の交通費がかかることを知り、親に言い出せずに悩みました。結局、部活を休みがちになり、気持ちが沈んでいくのを感じました。高校生になってもその記憶が残っていて、部活には入部せず、学校に申請してアルバイトを始めました。携帯代などは自分で支払うようになりましたが、周囲と同じように部活動を楽しめなかったことは、今でも心に残っています。お金のことを気にせず、やりたいことに挑戦できる環境があったらよかったと思います。
関東地方/社会人/女性
中学のとき、新品の制服が買えず、自分だけが古い制服を着ていることがとても恥ずかしかったです。高校入学時も、制服のお古を譲ってもらえるか先輩に聞くのがカッコ悪く感じて、言い出せませんでした。 部活のシューズがサイズアウトしたときも、親に言うのが申し訳なくて、我慢して履き続けました。周囲の友達は当たり前のように新しいものを使っていて、自分だけが“気を使う側”になっているような気がして、心がすり減っていくようでした。学校生活の中で、こうした小さな格差が積み重なることで自分に自信をもつこともできず、つらかったです。
関東地方/社会人/女性
中学生のとき、スキーの宿泊学習がありました。みんなが楽しみにしている中、私は費用のことが気になって、参加を諦めました。
親に相談すると、積立金が返金されると聞いて喜んでいましたが、その姿を見て、なんとも言えない気持ちになりました。『行かなくてよかった』と自分に言い聞かせながらも、本当は行きたかった。思い出が作れないことよりも、“お金のことで我慢するのが当たり前”になっていることが悲しかったです。こうした場面で、少しでも支援があれば、選択肢が広がったのではと思います。
関東地方/社会人/女性

4. 家計とのバランス

親の負担への遠慮 親の就労状況や病気、収入の不安定さにより、子どもが進学や活動の希望を口にできず、遠慮して諦めるケースが多くあります。親の苦労を間近で見て育つことで、子ども自身が「迷惑をかけたくない」と希望を抑え込み、自己肯定感や将来への展望に影響を及ぼしています。

ひとり親になったと同時に母が乳がんになってしまい収入が途絶えました。入院、手術、治療にお金が必要だったため食費を更に減らし生理用品や文房具にも困るようになりました。母は就学援助制度を利用していましたが、宿泊学習費、修学旅行費は自費で一旦支払わなければならず、お金の工面が本当に大変そうでした。修学旅行でのお小遣いや予備の体操服など就学援助制度では賄えない費用もたくさんあり、叔父や叔母に「必ず返すから貸してほしい」とお願いする母の姿を見た時は、宿泊学習や修学旅行は諦めた方がいいのかな?と悩んだことを覚えています
大学生・近畿地方・女

5. 心理的・社会的な影響

教育費の困難は、単なる経済的問題にとどまらず、子どもたちの心に深い影響を与えています。自己肯定感の低下、孤立感、将来への不安などが積み重なり、「自分には価値がないのでは」と感じるようになることもあります。教育の機会格差は、心の格差にもつながっています。

高校時代、学費の滞納に関する書類を先生から、教室でみんなの前で渡されました。その瞬間、周囲の視線が痛いほど突き刺さり、恥ずかしさと悔しさでいっぱいになりました。親にはお金のことを言えず、友達のように放課後にマックやカラオケに行ったり、休日にディズニーへ行ったりすることもできませんでした。“楽しい思い出”と呼べるものがほとんどなく、学校生活の中で孤立感を抱えながら過ごしていました。経済的な事情が、日常のささやかな楽しみまで奪ってしまうことを、もっと多くの人に知ってほしいです
近畿地方/高校生/男性
友達と遊びに行く約束をするたびに、「お金は大丈夫かな」と考えてしまい、結局断ってしまうことが多くありました。学校祭やイベントでも、みんなが衣装や小物にお金をかけている中、自分は最低限の準備しかできず、どこか引け目を感じていました。“楽しむこと”に対して遠慮が生まれ、心から笑えない時間が増えていくのがつらかったです。周囲と同じように過ごしたいだけなのに、経済的な事情がその気持ちを押し込めてしまう。そんな経験をした子どもたちが、安心して参加できる環境が必要だと思います。
近畿地方/高校生/男性
僕には夢があります。もっと勉強して、将来は社会に貢献できる仕事がしたい。でも、現実には塾に通うお金もなく、教材を買うのもためらうほど家計が厳しいです。『空気以外は何をするにもお金がかかる』と感じる毎日。自分の力だけで頑張るしかないと思っているけれど、限界も感じています。もし、経済的な事情に関係なく、誰もが学びたいだけ学べる社会があったら…それが僕にとっての“応援”です。
近畿地方/高校生/男性
もっといろいろな人と関わってみたいと思っています。でも、今の生活の中で知っている大人は、母と学校の先生だけ。進路や将来のことを相談できる人が少なく、視野が狭くなっているように感じます。家庭の事情で外の世界と接する機会が限られていて、自分の“器”が広がらないことに焦りを感じることもあります。もし、地域や学校の中に、気軽に話せる大人やロールモデルがいたら、もっと前向きに未来を描けたと思います。経済的支援だけでなく、心の支えになるような“つながり”の応援がほしいです。
近畿地方/高校生/男性

1. 制度や申請方法の簡素化や振込時期の早期化

奨学金や支援制度の申請は団体ごとに手続きが異なり必要書類も多く、受験勉強と並行して行うには大きな負担となっています。収入証明書の取得費用なども申請者側の負担となり、制度の存在を知っていても申請を諦めざるを得ないケースが生まれています。定時制高校が対象外となる制度もあります。

授業料無償化とは一体何なのか?申請をしてから実際に振り込まれるまでに長い時間がかかり、一旦こちらが立て替えて振り込まなければなりません。そのため、母は仕事を増やしたり、保険を解約したりして、授業料を払うのに必死で、私も高校を辞めた方が良いのではないかと考えています。
関東地方/高校生/男性
高校3年生のとき、複数の奨学金制度に申し込もうとしました。でも、団体ごとに申請書のフォーマットや必要書類が異なり、ひとつひとつ確認して準備するだけで膨大な時間がかかりました。受験勉強と並行して進めるには負担が大きすぎて、途中で諦めかけたこともあります。収入証明書の取得にも費用がかかり、親に頼むのも気が引けて、精神的にもつらかったです。制度があること自体はありがたいけれど、申請のハードルが高すぎて、必要としている人ほど届きにくいのではと感じました。もっと簡単で、安心して申請できる仕組みがあったらよかったです。
関東地方/高校生/男性
奨学金の申請をしようとしたとき、まず制度の種類が多すぎて、どれが自分に該当するのかを調べるだけでも一苦労でした。ひとり親世帯や非課税世帯向けの制度は、提出書類が多く、しかも収入証明書の取得にお金がかかることを知って驚きました。『本当に支援が受けられるか分からないのに、ここまで準備しなければいけないの?』と不安になりながら、受験勉強と並行して書類を揃えるのはとても大変でした。制度があることはありがたいけれど、申請者の負担が重すぎると、必要な人ほど申請を諦めてしまうと思います。もっと簡単で、安心して頼れる仕組みがあったらよかったです。
関東地方/高校生/男性
中学時代、家庭の事情で不登校になり、学校の課題もほとんど提出できませんでした。その結果、成績が悪く、奨学金の申請条件を満たせないと言われました。高校には定時制で通うことができたけれど、定時制は対象外の奨学金制度も多く、選択肢が限られていることにショックを受けました。『頑張って通っているのに、制度の枠から外れてしまう』――そんな現実が、努力する気持ちをくじいてしまうこともあります。事情を抱えながらも学び続けている子どもたちに、もっと柔軟で、実情に寄り添った支援制度があったらよかったと思います。
関東地方/高校生/男性

2. 情報格差を埋めたり相談のハードルを下げるような支援

支援制度があっても、情報が届かず、調べる手間や相談のハードルが高いため、活用できないまま終わることが多くあります。信頼できる相談窓口や、制度を一元的に知る場が身近にあれば、もっと早く安心して進路を考えられたという声が多く、情報アクセスの格差が進路格差に直結しています。

支援制度があることは後から知りました。でも、当時はその情報がどこにあるのかも分からず、自分から調べるのはとても難しく感じていました。学校や地域からの案内もなく、制度の存在すら知らないまま過ごしていた時期もあります。『もっと早く知っていれば使えたのに』と思うことが何度もありました。情報が届かないことで、進路や生活の選択肢が狭まってしまうのは本当に残念です。支援制度は“ある”だけではなく、“届く”ことが大切だと思います。
近畿地方/高校生/男性
高校進学を考えたとき、支援制度を調べるのはすべて自分の手作業でした。ネットで検索して、団体ごとの条件を比較して、申請書類を集めて…。受験勉強と並行して進めるには、あまりにも負担が大きかったです。『誰かがまとめて教えてくれたら』と何度も思いました。制度が複雑で、情報が点在していることで、必要な人ほど取りこぼされてしまう。支援制度を一元的に知る場や、相談できる窓口がもっと身近にあれば、安心して進路を考えられたと思います。
近畿地方/高校生/男性
進路やお金のことを誰かに相談するのは、すごく勇気がいることです。家庭の事情を話すことに抵抗があり、『こんなことを話してもいいのかな』と不安になることも多いです。

学校の先生に相談しても、制度の詳細までは分からないことが多く、結局自分で調べるしかない状況です。相談すること自体がハードルになってしまうと、支援制度があっても活用できないまま終わってしまいます。もっと気軽に話せる場や、寄り添ってくれる大人がいたら、どれだけ心強かったかと思います。
近畿地方/高校生/男性

3. 学習支援・塾費用への応援

塾や学習支援を受けるための費用が高く、通いたくても通えない子どもが多くいます。塾に通うための奨学金制度や、無料・低価格で質の高い学習支援があれば、学力面だけでなく精神的な安心感にもつながります。オンライン支援だけでなく、対面でのサポートも望まれています。

高校受験のとき、周囲の友達が塾に通っている中、自分は家計の事情で通うことができませんでした。塾に通えばもっと効率よく勉強できるのに…と何度も思いましたが、親に負担をかけたくなくて言い出せませんでした。もし、塾に通うための奨学金制度があったら、もっと安心して受験に向き合えたと思います。学力だけでなく、精神的な支えにもなったはずです。学びたい気持ちがあっても、経済的な理由で選択肢が狭まってしまうのは、本当に悔しいことでした。
関東地方/専門学校生/女性
受験期に、こどもや若者の学びを支えてくれるNPOのオンライン学習支援を利用しました。ネット上で面談をしてもらい、進路の相談や勉強のアドバイスを受けることができました。学校や家庭ではなかなか話せないことも、安心して話せる場があることで、気持ちが前向きになりました。経済的な事情で塾に通えない中、こうした支援があったことは本当に心強かったです。学力面だけでなく、気持ちの面でも支えてもらえたことに感謝しています。
関東地方/専門学校生/女性
利用したオンラインでの学習支援はとてもありがたかったけれど、時には直接会って話したり、一緒に勉強したりできる場があったらもっと安心できたと思います。画面越しでは伝えきれない不安や悩みもあって、対面での支援があれば、もっと深く相談できたかもしれません。経済的な支援だけでなく、心の距離を縮めるような関わり方が、子どもたちには必要だと感じます。
関東地方/専門学校生/女性

4. 通学・学校生活への支援

通学定期券や修学旅行の積立や教材など、日常的な学校生活にかかる費用が家計を圧迫しています。支援金が後払いであることも負担となり、「出すお金がない」と親が悩む姿を見て、子どもが希望を言い出せなくなることもあります。通学費や学校生活にかかる費用への前払い支援や免除制度が求められています。

進路を考えるうえで、オープンキャンパスに行くことはとても大切だと思っていました。でも、地方に住んでいる私にとって、交通費や宿泊費は大きな負担で、親に頼むこともできず、結局ほとんど参加できませんでした。周囲の友達は1年生の頃から複数の大学を見に行っていて、進路の話をしているのを聞くたびに、焦りと悔しさを感じました。進学への意欲があっても、物理的に動けないことで選択肢が狭まってしまう。オープンキャンパスの旅費を支援してもらえる制度があれば、もっと前向きに進路を考えられたと思います。
近畿地方/高校生/男
高校への通学には電車を使っていて、定期券代が毎月かかります。支援制度があると聞いて申請しようとしたら、「通学費には使えない」と言われてしまい、がっかりしました。
学費や教材費だけでなく、通学にかかる費用も家計には大きな負担です。毎月の定期代をどう工面するか、親が悩んでいる姿を見ると、自分の通学すら申し訳なく感じてしまうこともありました。通学費も含めて支援してもらえる制度があれば、もっと安心して学校に通えたと思います。
近畿地方/高校生/男
支援制度に申し込んだとき、「支援金は後から振り込まれる」と説明されました。でも、実際には毎月の支払いが先に必要で、家計が厳しい中でその“立て替え”がとても大変でした。母は『出すお金がないんだよね…』と何度も言っていて、制度があるのに使えないというもどかしさを感じました。支援が“後払い”ではなく“前払い”だったら、もっと安心して学校生活を送れたと思います。制度の仕組みそのものが、支援を必要とする家庭にとって使いやすいものであってほしいです。
近畿地方/高校生/男
中学までは義務教育でしたが、高校からは入学時にタブレットやパソコンなどを購入しなければならず、公立高校でもものすごくお金がかかります。授業や課題の多くがデジタル化されている今、端末の有無が学びの質に直結する場面も少なくありません。家計が厳しくても勉強する意欲のあるこどもに、パソコンを支援してくれる制度があれば嬉しいです。
近畿地方/高校生/男

行政で窓口を一本化してほしい。そこに連絡すれば個人に合った情報が届く仕組みがあれば、取りこぼれず希望が持てる。

(関東地方/大学生/女)

相談しやすい場所を増やすことが大事。学校や地域に気軽に話せる窓口があるだけで安心できる。

(関東地方/高校生/女)

LINEやYouTubeなど、こどもが見るSNSで情報発信してほしい。

(近畿地方/高校生/男)

奨学金のパンフレットやネットでの発信、ひとり親向けの相談機会を設けてほしい。

(中部地方/高校生/男)

学校にもっと周知してほしい。先生が奨学金の重要性を理解し、声かけやアドバイスをしてほしい。

(関東地方/大学生/女)

学校の授業内で全員に伝えてもらえる機会がほしい。掲示だけでは伝わらない。

(九州地方/高校生/女)

SNSや学校でチラシを配ってほしい。もっとわかりやすく伝えてほしい。

(近畿地方/高校生/男)

一緒に頑張る仲間がほしい。仲間から情報が回ってくるとやってみようと思える。

(近畿地方/高校生/男)

ネットに情報をもっと書いてほしい。学校や役所は教えてくれない。

(関東地方/高校生/女)

母子家庭の子が進学を諦めないよう、具体的な告知を学校やメディアでしてほしい。

(関東地方/高校生/女)

授業料を申請なしで無償化してほしい。そうすれば進学を諦める子が減る。

(中部地方/高校生/男)

学校側がもっと親身になって支援制度の説明をしてほしい。

(関東地方/大学生/女)

TikTokやInstagramで発信し続けてほしい。こどもが見ている場所で届けてほしい。

(近畿地方/高校生/男)

国や自治体がもっと積極的に発信してほしい。学校を通じて情報を届けてほしい。

(関東地方/高校生/女)

学校で進路情報や支援制度の一覧を勧めてくれると安心して進路を決められる。

(関東地方/大学生/女)


教育費調査(識者コメント)

教育費に関する家庭の経済状況がこどもの心身に与える影響

小林雅之(桜美林大学教授)

コメントには、現在の経済的支援の様々な問題点が浮き彫りにされている。

今回のアンケート結果からは、ひとり親家庭の子どもたちが直面する経済的困難が、進学や日常生活に深刻な影響を及ぼしている実態が浮き彫りになっている。最も深刻なのは、家庭の経済状況によって高等教育への進学が制限されることである。高等教育進学率が8割を超える現在でも、経済的理由で進学を断念せざるを得ない子どもが確実に存在している。

さらに、たとえ進学できたとしても、経済的理由から、自宅通学、国公立大学、短大や専門学校など、進学先が限定されてしまった人もいる。私立大学や専門学校などでは、学部や専門分野により授業料も異なる。高い授業料のため、希望する進学先を選べなかった人もいる。

これらはすべて教育費の家計負担が重すぎることとそれに対する支援の乏しさによって生じている問題だ。

さらに、問題なのは、授業料だけではない。制服代、部活動の遠征費、演奏会や修学旅行の費用など、学校生活に必要な支出が家計を圧迫している。塾や予備校、資格取得、オープンキャンパスへの交通費など、学校外の学習機会にも大きな格差が生じている。

こうした直接お金に関わる問題だけではない。心理的負担やストレス、学習意欲の喪失も大きな問題だ。「心がすり減っていくようでした。」というコメントは象徴的だ。この問題は、本人だけでなく家族にも同じように、かかってくる。自尊心や自己肯定感は親の苦労を間近で見て育つことでむしろ育まれる面もある。しかし、子ども自身が「迷惑をかけたくない」と自尊心や自己肯定感を抑え込んでしまう。

こうした状況にあると、視野が狭くなってしまう。周りのことにかまう余裕がない。こうして孤立化し孤独感に苛まされている。また、今を何とかすることに精一杯で未来を想像したり考えたりすることもできない。「母と2人だけの世界にとどまり」、「自分の”器”が広がらないことに焦りを感じることもあります。」

進学に必要な情報を収集することもできない。したくても時間的にも精神的にも余裕がない。

こうした家族の状況に学校、地方公共団体や国の支援が追いついていない。また支援があったとしてもワンストップサービスになっておらず、申請のハードルは高い。「制度の存在を知っていても申請を諦めざるを得ないケースが生まれています」

学校現場にも、こうしたケースに丁寧に関わる余裕はない。教員は過重労働になっている。「学校の先生に相談しても、制度の詳細までは分からないことが多く、結局自分で調べるしかない状況」になっている。このため、教職員に多くを望むのは難しい。

家庭の実情に寄り添った支援が必要だ。「信頼できる相談窓口や、制度を一元的に知る場が身近にあれば」とか「「もし、地域や学校の中に、気軽に話せる大人やロールモデルがいたら、もっと前向きに未来を描けたと思います」という声は切実だ。

注目されるのは、次の回答だ。

「こどもや若者の学びを支えてくれるNPOのオンライン学習支援を利用しました。ネット上で面談をしてもらい、進路の相談や勉強のアドバイスを受けることができました。学校や家庭ではなかなか話せないことも、安心して話せる場があることで、気持ちが前向きになりました。経済的な事情で塾に通えない中、こうした支援があったことは本当に心強かったです。学力面だけでなく、気持ちの面でも支えてもらえたことに感謝しています」。経済的事情で塾に通えない子どもにとって、こうした支援は学力面だけでなく心理面でも大きな支えとなっている。

学校や国があてにならないのであればこうした支援が広がることが求められる。そして、国や地方公共団体は、こうした民間支援を後押ししつつ、教育基本法第4条第3項にある「経済的理由によって修学が困難な者への奨学措置」を実質的に果たす必要がある。家庭の実情に寄り添い、信頼できる相談窓口や一元的な情報提供の場を整備することが急務である。

子ども参加型のひとり親家庭支援制度構築に向けて

森田明美(東洋大学名誉教授)

ようやく語りだしてくれた子どもたちのメッセージをおとなが特に子どもに影響を与える立場にいるおとなが聞く機会を大切にしたいと思う。

子ども支援の取り組みは、親、教師、家庭、学校の責任、自助を原則としてきた。その結果、おとなに意見や状況を聞き、おとなが考える子どもの不足分を補うという発想を取られることが多かったのではないだろうか。

こうしたこれまでの取り組み方に対して、2022年に子ども基本法が制定され、子どもの権利条約の原則を具体化する取り組みが実施されるようになった。そこで取られた「子どもまんなか」という言葉で表現される子どもの権利の考えによって、やっと子ども自身は何を希望しているのか、実態はどうなっているのかということに視点を切り替えられ、子どもに聞くという「意見表明、参加」が始まったのである。子どもたちも学校や家庭でのおとなたちの状態や対応は十分に知っている。だから、自分の語ることがどのような支援につながるのかということにイメージがつながった時に、やっと重い口を開き、参加し、語りだしてくれることになる。

子どもが動き出すには段階がある。さんざん裏切られてきた子どもたちであるがゆえに、簡単かつ単純な話ではない。「情報や制度がわかれば、それに挑戦する人はいる」という段階の子どももいるが、そうでない子どももたくさんいる。とりわけ、ひとり親の子どもたちの置かれてきた状況は過酷である。

それすら届かない人、届いても信じない、挑戦しない人たちがいる。ずっと長く裏切られてきた子どもたちの多くはそうした状況に置かれている場合が多い。

意欲がなければそこに働きかけても無視される。働きかけを信じて利用したときの成功体験がない子どもたちには挑戦をするという面倒なことはしないし、まして希望を語るなどということはしない。

排除され続けてきた子どもたちが語り始めてくれたことに感謝したい。そしてやっと自分が選び取るチャンスをつかむ入口に来てくれたのである。仲間がつぶされていることを私たちに伝えてほしい、そのメッセージをおとなたちがどれくらい真剣に実現に向けた努力をするかが問われている。少しずつ、一つずつ、具体化できたこと、できないことはなぜなのか、そうした応答を、あきらめないでやり続けることのなかから、信頼関係が生まれ、少しずつ子ども参加によるひとり親支援が具体化していくことになる。新しい信頼が形成されるには時間が必要である。 ひとり親家庭サポート団体全国協議会が子どもたちと一緒に子ども自身が主体の人生に寄り添うための挑戦をここから始めたいと思う。