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「日常生活支援事業調査」〜仕事と子育ての両立の支援の必要性

JSPF初の調査 日常生活支援事業調査から

先進国(OECD)でもっとも貧困率が非常に高いといわれる日本のひとり親家庭の状況。さまざまな制度改善はあるものの、依然として厳しい状況に置かれている。また世界でもトップクラスにひとり親(特に母子世帯の母)の就労率が高いことも周知のことである。

ひとりで仕事と子育てを担っているひとり親は仕事の都合、お子さんの病気、親の病気やけが、等々様々な場面で助けを必要としている。

しかし、ひとり親家庭支援の中でこの分野の助けとしてある、ひとり親家庭日常生活支援事業は、自治体ごとの実施内容実施量についてのばらつきが大きく、希望しても利用できないという声が長年届いていた。

そこで、ひとり親家庭日常生活支援の実施状況や当事者調査を行うことにより、ひとり親家庭に支援が必要な状況を把握し、また制度の改善の方向を探ろうと、この調査を始めた。

調査には、調査実施団体 ひとり親家庭サポート団体全国協議会加盟団体のうち13団体が参加、また「こども福祉研究所(代表 森田明美東洋大学名誉教授)」が調査設計、実施、まとめにかかわる進行管理、調査票の作成、集計、分析、報告書作成への助言協力と参加協力団体への研修を担当。

スケジュールは以下のようだった。

・自治体調査  20自治体 2024年3月~4月
・事業者調査  11自治体 2024年4月~5月
・当事者調査  1576人 2024年6月

制度は 昭和50年度創設されているが、事実上、母子福祉団体の自助事業を想定していたように見受けられる。実施主体は都道府県又は市町村とし、事業の一部を母子・父子福祉団体、NPO法人や介護事業者等に委託することができるとしている。

支援内容としては、生活援助と保育サービスとなっており、補助率は国1/2、都道府県1/4、市町村1/4が基本だった。

令和4年の実績を見ると、実件数は2371件で、児童扶養手当受給者数のなんと0.29%しか利用できていないことがわかった。

自治体調査、事業者調査から見えてきたのは、実施体制が流動的になっていることである。従来の母子家庭等就業・自立支援センター(ひとり親家庭支援センター)事業受託者である母子父子福祉団体に委託から、ファミリーサポートセンター受託団体、社会福祉協議会、子育て支援団体、シルバー人材センターなどが受託している団体もあった。

そして、年間の支援件数が多い自治体は、熱心な子育て支援団体が担っていた。

また事業者が母子寡婦福祉団体である場合、児童扶養手当受給者数との割合で1%未満の利用率であっても支援が十分であるという認識をしている事業者が多かった。

いっぽう、当事者調査では90%のひとり親が、日常生活の中で、家事や子育ての手助けがなくて困ったったと回答していることとのギャップがあることが伺えた。利用件数が比較的多いファミリーサポートセンター事業者や子育て支援事業者による場合は利用件数が多い傾向がみられた。また支援員の高齢化不足を訴えている事業者もあった。

富山県黒部市、宮崎県小林市などそもそも事業を実施していない自治体があった。
ひとり親家庭のさまざまなニーズに応えることのむずかしさと研修体制の必要性を感じた
当事者のニーズは高いにもかかわらず、支援制度を利用できていない…今後どのように解決をしていけばいいのだろうか。国、行政とともに考えていくべき課題であることが明らかとなった。

母子家庭、父子家庭及び寡婦が、安心して子育てをしながら生活することができる環境を整備するためには、日常生活支援事業実施自治体数の増加、日常生活支援事業実施事業者の拡大の方策、事業運用の改善などが求められる。

いっぽうでは、そのほかの地域の保育・子育て支援サービスの充実の方向性もあるのかもしれない。たとえば、ファミリーサポート事業の充実とひとり親家庭への割引制や、延長保育、夜間保育、トワイライトステイ等の充実である。

令和7年度予算では、日常生活支援事業の単価はほぼ2倍となった。

https://www.cfa.go.jp/assets/contents/node/basic_page/field_ref_resources/672ae940-b03d-46e2-b800-2c49bc220985/fd8bc4a0/20250121_councils_shingikai_hinkon_hitorioya_672ae940_05.pdf

事業を行っているあるひとり親支援センター運営団体に聞くと、単価が上がることはよいが、なかなか支援者が増えない。この支援は臨時の仕事となるので、収入も保障されないので、単価が上がるだけでは、十分ではないのではないか、ということであった。

ひとり親家庭の86%が働いているが、非正規が多く、収入が低い…この現実を変えていくために、仕事と子育てのすきまを埋める施策が必要だ。(赤石記)