家計の困りごと
暮らしの困難を、あきらめない社会へ
ライフステージごとに変化する家計の課題に対し、ひとり親家庭の方々はどのように向き合っているのでしょう。
NPO法人ひとり親家庭サポート団体全国協議会は、昨年「家計の困りごと」体験談を募集、当事者の皆様から寄せられた切実な体験談を、本サイトにまとめました。
いただいたお声は、プライバシーに配慮した形で公開し、今後のセミナーや政策提言に直接活かしてまいります。
ひとり親家庭がより安心して暮らせる社会への一歩を共に踏み出しましょう。
ひとり親家庭の方々の声
目次
- あなたはシングルマザーですか、シングルファーザーですか
- あなたは、以下の手当や年金そのほかを受給していますか
- 扶養しているお子さんは何人ですか
- あなたはお子さん以外に同居している方がいらっしゃいますか
- あなたはこれまでに金銭的に困ったことがありましたか。それはどんなときでしたか
児童扶養手当について
- 児童扶養手当の全部支給をもらっていますか。あるいは一部支給をもらっていますか。
- 児童扶養手当の全部支給を受けるために、就労収入を低く抑えようとしたことがありますか
- 児童扶養手当の手当は、全部支給の収入制限を超えると総収入(給料と手当)が減ると思いますか。それとも収入制限を超えても総収入は増えていくと思いますか。
マネープランについて
Q.
あなたはシングルマザーですか、シングルファーザーですか


Q.
あなたは、以下の手当や年金そのほかを受給していますか


Q.
扶養しているお子さんは
何人ですか

Q.
あなたはお子さん以外に同居している方がいらっしゃいますか

Q.
あなたはこれまでに金銭的に困ったことがありましたか。それはどんなときでしたか
離婚前の別居期に生活費がなく困った
12.0%
出産前後にお金がなく困った
5.3%
手当の支給と金額が前年または前々年所得により決まるため、
1年以上手当がもらえず困った
8.3%
小中学校入学時に困った
12.0%
あなた自身または子どもが病気になり
お金がなくて困った
8.3%
仕事がなくお金がなくて困った
8.3%
子どもが18歳の年度末より大きくなり
手当がなくなりお金がなくて困った
4.7%
児童扶養手当が2か月に1回の支給なので、
次の支給日の直前にお金がなくて困った
8.7%
現在物価が高く必要な食料が買えない
19.3%
児童扶養手当を受給している人に伺います。
Q.
児童扶養手当の全部支給をもらっていますか。
あるいは一部支給をもらっていますか。


全部支給をもらっている方にお聞きします
Q.
児童扶養手当の全部支給を受けるために、就労収入を低く抑えようとしたことがありますか

Q.
児童扶養手当の手当は、全部支給の収入制限を超えると総収入(給料と手当)が減ると思いますか。それとも収入制限を超えても総収入は増えていくと思いますか。以下の図を見て回答してください。

出典:「ひとり親家庭等の支援について」 (こども家庭庁)


(分からない2.4% その他4.9%)
マネープランについて
Q.
5年後、10年後のご自身とお子さんの家計について考えたことがありますか

Q.
ひとり親に役立つマネープラン、教育費も含めたライフプランのセミナーを受講してみたいですか。

Q.
あなたが先月9月にした仕事は以下のどれにあてはまりますか


自治体・国に要望がありましたら書いてください
不登校によって親が離職・休職せずに済む支援制度をつくってほしい
家事代行サービス利用への助成があると助かる
夏休みや冬休みなど、長期休暇中に利用できる子どもの居場所・預け先を拡充してほしい
転職や減収、借金など生活悪化の実情を支援判断に反映してほしい
専門学校やサポート校も含め、教育費・通学費への支援対象を広げてもらいたい
子どもが就職・自立するまで、手当の支給期間を延長してほしい
DVでなくても、親族に連絡せずに支援申請できる仕組みが必要
児童扶養手当の所得制限は引き上げ、減額・打ち切りを緩和してもらいたい
医療費無償化は18歳で打ち切らず、就労まで延長してほしい
精神的DVへの理解を深め、支援や判断に反映させて
養育費は確実に回収できるよう、強制力のある制度に
離婚・別居時に受けられる支援を、市役所が必ず説明・案内して
家賃補助など、住居費への直接的な支援制度を設けてほしい
物価高や光熱費高騰に対し、実情に合った生活支援が必要
食料支援や備蓄米配布をすすめてほしい
地域差なく、全国どこでも平等に支援を受けられる仕組みに
ひとり親への就業差別をなくして
働くほど手当が減る仕組みを改め、働く意欲を削がない制度に
急な出費に対応できるよう、手当の前借りや迅速支給の検討を
学校費用を事前に明示し、入学前に使える支援金制度を整えて
奨学金は保証人なしでも利用できる制度に
習い事や部活動への補助を行い、子どもの機会格差をなくしたい
市役所・社協・NPOなどが連携し、支援情報を一元化してもらえないか
識者コメント
ひとり親家庭の家計の不安を軽減するためには
清水香(FP&社会福祉士)
より早い段階で相談を
ひとり親になる、あるいはその可能性が生じたときには、誰しも大きな混乱を抱えます。親権、養育費、財産分与など法律が絡む取り決めが多く、これからのくらし・住まい・仕事と、向き合うべき課題は多岐にわたります。ひとりで抱え込むには負担が大きすぎます。
大切なのは、行政・支援団体・専門家など複数の相談窓口と早めにつながること。早期に相談できれば、準備に時間をかけられ、選択肢も広がります。制度や支援、これからの生活について「正しい情報」を得ることが何より重要です。
なお、児童扶養手当などひとり親の支援制度は、原則としてひとり親になってからが対象で、かつ現況ではなく前年所得等をもとに支援の可否が決定されます。生活保護と異なり、困りごとが起きたとき直ちに支援を受けられるのではないため、それを踏まえて準備をする必要があります。
安定した収入を得られる就労を
ひとり親になると、自身が生計維持者となります。こどもと安心して暮らし続けるために、安定した収入を得ることは大前提です。新たに住まいを確保する場合でも、就労していなければ賃貸契約は難しくなります。新たに仕事を始める際には、自治体や支援団体の就労支援窓口に相談したり、就労支援プログラムを活用したりすることも重要です。
収入が一定額に満たないひとり親には、母子・父子の区別なく収入に応じた児童扶養手当が支給され、世帯収入を下支えします。たとえばこども1人の場合、親の就労収入が190万円なら月約4万7千円の満額が支給され、収入が384万円になると一部支給の約1万1千円になります(2025年度の金額)。
ここで知っておきたいのは、就労収入が増えて手当が減っても、世帯の総収入は増えていくという点です。前述の例では、満額支給時の世帯収入は年246万円、一部支給時は年398万円となります。ひとり親には「働き損」や「年収の壁」は存在しません。
児童扶養手当が止まらないように働く方が得と耳にすることがありますが、これはひとり親の就労意欲を削ぐ危険な誤解です。児童扶養手当はこどもが18歳の年度末で終了する一方、教育費のピークは大学入学前後以降に訪れます。
さらに、子育て後の人生はより長くなっており、最多死亡年齢は男性88歳、女性92歳へと伸びています。厚生年金に加入できる働き方で将来の保障を確保し、長く働ける基盤を整えることが、長期的な安心につながります。
なお、こどもの不登校や障害により就労が難しくなる場合もあります。こうした困難に対しては、行政や勤務先によるより手厚い支援が求められます。
教育費のピークへの対応
ひとり親にとって最大の負担のひとつが「教育費」で、ピークは高校入学前後と大学入学前後の2回。文科省の調査では、公立中3年生の学校教育費と通塾費の合計は年間約60万円、大学初年度の納入金は平均で約150万円にのぼります。家計だけで賄うのは難しいため、18歳頃を目安に計画的に貯蓄しておくことが重要です。
一方で、支援制度も拡充してきています。高校では所得制限なく授業料が減免される「就学支援金」が、大学などの高等教育では日本学生支援機構の「修学支援新制度」による返済不要の給付奨学金と授業料・入学金の減免があります。住民税非課税世帯等に加え、子3人以上の多子世帯は所得制限なく授業料が減免され、理工農系学部では中間所得層も支援対象になります。大学や財団、自治体による給付型奨学金もあり、早めの情報収集が鍵となります。他方で貸与奨学金は、返済の必要があります。
なお、給付奨学金・貸与奨学金はいずれも入学後に振り込まれるため、入学前の納入金には使えません。準備が間に合わない場合は「国の教育ローン」や、ひとり親向け・低所得世帯向けに社会福祉協議会等が行う貸付制度などもあります。審査に時間がかかるため、早めの相談が必要です。
義務教育では授業料や教科書費はかかりませんが、部活動費や学用品など「隠れ教育費」の負担が指摘されています。就学援助や学習支援などの支援制度について、さらなる周知が望まれます。
ひとり親家庭の家計の困難とは
赤石千衣子(NPO法人ひとり親家庭サポート団体全国協議会理事長)
90人以上のひとり親家庭が声を寄せてくれていました。
ひとり親家庭の困りごとの1位は家計であるが、どんなときに特に困るのでしょう。それがわかる体験談でした。場合に分けて考えてみました。
① 離婚前後と未婚での出産のとき
基本的に離婚したり出産後でないとひとり親家庭の支援は受けられません。DV被害に遭い保護命令が出ている場合などのみ児童扶養手当が受給できます。そのためいちばん支援がほしいときにいちばん家計が困難となるのです。そのしんどさを伝えてくれた人が多くいました。
未婚での出産のときも、こどもの父親の婚約破棄などの理由があれば精神的にもたいへんな時期に、家計も困難を極めることになります。
親族に借金したりという人も多かったが、親族がいない場合はどうしたらいいのでしょう。キャッシングなどでしのいだという声もありました。借金をする前に、生活保護受給がもっと受けやすくなるとよいと思います。
② 特にDVによる離婚
DVの場合居所がわかるので実家に帰れなかったなどさらに大変な思いをしている人が多かったです。
③ 2か月に1度支給の児童扶養手当で家計管理がたいへん
児童扶養手当を頼りに生活しているひとり親家庭は多いが、その支給が2か月に1度であることは家計管理にとても負担です。この困りごと体験の中でも支給がない月に収入が少ないと家計が火の車になるという声がありました。毎月の支給になるように改善が望まれます。
④ こどもの入学時や教育費
こどもの教育費はひとり親家庭にとっては大きな支出です。小学校、中学校はそれでも入学前準備金などが就学援助から給付されるようになってきました。たぶん高校入学時の家計がもっとも厳しいのではないでしょうか。最近は高校入学時にタブレットの購入なども義務となっており、入学準備にかかる額が高額化しています。高校生奨学給付金制度などはあとからの給付となる。高校入学時に借金をして返済ができなくなり、大学進学を考える余裕がなくなっていくのです。
⑤ 親の病気や交通事故
自分が乳がんになったなど病気になってたいへんな思いをしたという体験もありました。医療費はかなり助成があるが、こどものケアも含めて大変厳しい生活になります。「離婚したばかりで当時こどもは2歳でした。私が死んだら 父親も母親も居ない子にしてしまうと必死に治療しつつ、 働いてきました」という声もありました。交通事故でクレジットカードのリボ払いにして凌いだという人もいます。
⑥ こどもの障害、不登校や親の介護
こどもの障害があると通院や療育、学校とのやりとりなどに時間がかかり、思うようには働けない状況になります。「時間に融通の利く仕事がなかなかない」という声があった。また不登校になっても大変です。役所にいた先生に「離婚したことを子どもに申し訳なく思え」と言われたなど、時間、家計、精神的なゆとりのないひとり親に心無い言葉をかけられています。不登校になったらこどもの年齢が小さいと親は仕事に行けなくなるケースもあり、少しのダメージで家計困難になることがわかります。
⑦ 子育てと仕事の両立困難
そもそも時間も足りないひとり親家庭は子育てと仕事を両立するのもギリギリ。でも収入も満足にないので、サービスを利用することもできないということがわかります。
⑧ 父子家庭の家計困難
男性だから収入が高い人ばかりではなく、高齢で子育てしながらだと男性でも収入が低くなり、しんどいという声もありました。
⑨ 物価高騰
物価高騰の悩みはとても大きい。かさましするなど体験は切実です。
ひとり親家庭の家計の困難はすぐに解決できるものは少ないように思います。そもそもギリギリのところになにかひとつ困りごとが起こると脆弱な生活がくずれてしまうのです。また精神的にもギリギリになっていますので、相談対応によって、さらに援助を受けられるかどうかに影響してしまいます。
できればこうした困りごとを見越した家計支援が行われるといいですね。
児童扶養手当の毎月の給付にすることや、所得制限の引き上げなどは求められています。また、高校生の入学奨学金は増額して、入学時に支給すること、そして、最後のセーフティネットである生活保護制度をもう少し受給しやすい制度にするなども実現していきたいと思います。








